2019年4月にイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)が発表した楕円銀河M87の中心に位置する巨大ブラックホールの画像の作成に用いたデータを解析したところ、リング状の構造にはならなかったと国立天文台の研究チームが発表しました。論文は2022年6月30日に米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されました。
EHTとは世界中にある電波望遠鏡を結合し、「ブラックホールシャドウ」を撮影するための国際協力プロジェクトのことです。発表された画像は明るいリング状の天体が示されており、この画像の中心部にブラックホールがあると発表されました。この時、ブラックホールから物質が噴出する現象である「ブラックホールジェット」は観測されなかったと発表されています。
国立天文台のチームはEHTが公開しているM87のデータを解析したところ、EHTが発表したリング状の構造ではなく、中心部分にある「コア構造」と、そこから伸びている宇宙ジェットおよびその一部とみられる「ノット構造」が見られたと発表しました。研究所チームはブラックホールの中心の構造に相当する分解能のデータが、それ以外の大きさのデータよりも少なかったためにEHTのデータではリング状の構造ができてしまったのではないかとの見解を発表しています。
話題となった世界初のブラックホールの画像の元となったデータを分析したところ、リング状の構造にならなかったとの指摘が発表されました。この指摘に対し、EHTのチームは国立天文台のチームはEHTのデータと分析方法を誤って理解しているとの指摘をしています。EHTのデータは公開されているので、今後も検証が進められて、どちらの分析結果が正しいと結論づけられるのか気になりますね。
https://www.nao.ac.jp/news/science/2022/20220630-m87.html
https://eventhorizontelescope.org/blog/imaging-reanalyses-eht-data
Wrote: わたなべ