すばる望遠鏡 低温の恒星を回る惑星を赤外線で発見!

 アストロバイオロジーセンターは、2022年8月1日、8メートル級望遠鏡用としては世界初の高精度赤外線分光器である、すばる望遠鏡の赤外線ドップラー装置IRD (InfraRed Doppler)を用いて、地球から約37光年離れた位置にある、太陽の5分の1の重さの赤色矮星「ロス508」のまわりで系外惑星を発見したと発表しました。

 近年、系外惑星の研究は、赤色矮星と呼ばれる恒星のまわりに注目が集まっています。しかし、赤色矮星は、表面温度が4000度以下と低温で、可視光では非常に暗い天体です。この赤色矮星に対する分光観測の困難さを解決するため、8メートル級望遠鏡用としては世界初の高精度赤外線分光器が開発されました。このIRDを用いて、晩期赤色矮星を戦略的に観測し惑星を探査するプロジェクト(IRD-SSP)が2019年より開始されています。

 今回、IRD-SSPで最初の系外惑星が、「ロス508」のまわりで発見されました。この惑星「ロス508b」は、地球の約4倍の最低質量しかありません(IRDでは原理的に惑星質量の下限値が求められるとのこと)。中心星からの平均的な距離は地球・太陽の距離の0.05倍で、ハビタブルゾーンの内縁部にあり、この惑星は楕円軌道を持つ可能性が高く、約11日の公転周期でハビタブルゾーンを横切る可能性があります。ハビタブルゾーンにある惑星は表面に水を保持し、生命を宿す可能性があります。

 今回発見された惑星は恒星の距離が近いため、現在の望遠鏡では直接撮像観測にはならないようですが、将来的には望遠鏡による生命探査の観測対象となるとのこと。技術の進化で今まで観測できなかったことが観測できるようになり、新たな発見が生まれているのですね。

Image Credit:アストロバイオロジーセンター

参考

https://www.nao.ac.jp/news/science/2022/20220801-subaru.html



https://academic.oup.com/pasj/article/74/4/904/6623879?login=false


Wrote: わたなべ