ブラックホールと衝突した「存在し得ないもの」とは?

 アメリカのLIGOとイタリアのVirgo干渉計で観測された重力波から、地球からおよそ800万光年離れているブラックホールと「存在し得ない」と考えられていた天体が衝突したとの論文が、『The Astrophysical Journal Letters』に2022年6月23日掲載されました。

 重力波は、ブラックホールや中性子星などの質量の大きな天体が高速に近い速度で運動するときに発生します。

 今回観測された重力波「GW190814」は2019年8月14日に観測され、 太陽の23倍の質量の天体と太陽の2.6倍の質量の天体が衝突した結果発生したものと分かりました。太陽の23倍の方の天体はブラックホールになるのですが、一方、太陽の2.6倍の方の天体については、太陽質量の2.4〜5倍の質量の天体は存在しないとする「質量ギャップ」問題から、正体が何なのかが問題となりました。ブラックホールだとしたら、観測史上最小サイズであり、中性子星だとしたら観測史上最も重いサイズになります。

 太陽の2.6倍の質量の天体の正体の結論は出ていないのですが、ブラックホールと中性子星が衝突する際に発生する光波が観測されていないことから、非常に質量が軽いブラックホールである可能性が高いようです。そのほかにも太陽の1.3倍の質量の中性子星同士が衝突したものである可能性も考えられています。

 今回観測された重力波から、これまで存在しないと考えられていたサイズの天体が実は存在していた可能性が明らかになりました。これから観測装置の精度が上がるにつれ、質量ギャップに存在する天体がもっと観測されるようになるかもしれませんね。技術の進歩で宇宙の正体が解き明かされていくのは、何とも楽しみです。

参考

https://www.gizmodo.jp/2022/06/a-black-hole-collided-with-something-that-shouldnt.html



https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab960f


Wrote: わたなべ