2022年6月14日、ケンブリッジ大学天文学研究所の研究チームは、金星大気中の二酸化硫黄(SO2)に着目して分析を進めたところ、生命の兆候につながる証拠を見つけることはできなかったと結論付けた論文を発表しました。
過去の金星の大気の観測において、ホスフィン(リン化水素 PH₃)が検出されたとする報告がありました。地球におけるホスフィンは、嫌気性生物(増殖に酸素を必要としない生物)によって生物的に生成される物です。そのため、金星の大気中に生命が存在している証拠ではないかとも考えられています。
研究チームによると、金星では雲層の下に高濃度の二酸化硫黄が存在するものの、その上にある雲層では桁違いに減少するといいます。その減少について過去の研究で提案された3種類の硫黄代謝について、大気モデルと生化学的モデルを組み合わせた分析を行ったところ、代謝が二酸化硫黄の減少をもたらす可能性は示されましたが、その他の水や酸素などの成分については火山活動による非生物的な発生源と矛盾していないことから、提案された硫黄代謝では雲層での二酸化硫黄の減少を説明できないと結論付けました。
金星の大気中のホスフィンの観測結果については、以前から賛否両論あって、金星の雲や地表からのサンプルリターンも検討されているとの話もありました。今回発表された結果から金星大気中に生命が存在する可能性はグッと低くなったように思います。ただ、身近な惑星に何かしらの形で生命が存在している可能性は信じていたいですね。
https://www.nature.com/articles/s41467-022-30804-8
Wrote: わたなべ