うしかい座の方向およそ1億2000万光年先にある「NGC 5731」と言う銀河に超新星爆発を起こした「SN 2020tlf」と言う星があります。この星は、爆発の130日前には兆候が捉えられ観測を続けた事で赤色超巨星の超新星爆発を初めて観測することに成功したそうです。
この観測は、カリフォルニア大学バークレー校のWynn Jacobson-Galán氏を筆頭とする研究グループによる赤色超巨星が超新星爆発に至るまでの最後の数か月間における活動についての研究成果の発表によるものです。
太陽のような自ら光を放つ恒星は内部で起きる核融合反応をエネルギー源として輝いています。恒星の内部では水素の核融合反応がエネルギー源となっていますが、中心部分の水素が使い果たされるとその周辺で核融合反応が起きるようになり、元々の形を保てず恒星の外層が膨張して赤色巨星や赤色超巨星へと進化していきます。
やがて内部の核融合反応が全て終わると恒星は最後を迎えます。恒星の最期はその質量によって異なると考えられています。太陽の8倍以上ある比較的重い恒星は超新星爆発を起こして中性子星やブラックホールを残すいっぽうで、太陽の8倍以下の比較的軽い恒星は超新星爆発を起こさずに白色矮星へ進化するとみられています。たとえば、太陽やシリウスは白色矮星になりますが、ベテルギウスは超新星爆発を起こすとされています。
2020年9月16日、後に「SN 2020tlf」と名付けられる超新星をハワイの小惑星地球衝突最終警報システム「ATLAS」が検出。追加観測の結果、上記にも記した通りうしかい座の方向およそ1億2000万光年先の銀河で発生した「Ⅱ型超新星」だったことがわかりました。
研究チームは「SN 2020tlf」の領域は超新星のように電磁波の強さが突発的に増す天体の検出を目的とした「Young Supernova Experiment」というプロジェクトのもとで、ハワイの掃天観測システム「パンスターズ(Pan-STARRS)」を使って2020年1月から観測が行われていました。ATLASによるSN 2020tlfの検出に先立つ約130日前、パンスターズは後に超新星爆発を起こす赤色超巨星が大幅に増光した様子を捉えていたそうです。
この増光は、超新星に関する従来の理解に反するものだったようです。発表によると、これまで超新星爆発前に観測することができた赤色超巨星はどれも比較的静穏で、激しい物質の放出や増光が示されたことはなかったそうです。今回の観測結果は、赤色超巨星の少なくとも一部では爆発直前の時期に内部構造が大きく変化し、星が崩壊する直前にガスが激しく放出される可能性を示すものとなりました。通常のII型超新星に至った赤色超巨星における爆発前の活動が直接観測された例は過去にないと指摘するJacobson-Galánさんは「これは死の直前における大質量星のふるまいを理解する上での突破口です」と語っています。
今回このような新たな超新星爆発の可能性が発見されたことで他にも赤色巨星や赤色超巨星の超新星爆発の可能性やすでに爆発を終えた星の元々の姿などへの研究につながるのではないでしょうか。可能性が広がります。
Wrote: 寺地