故障から1ヶ月ハッブル宇宙望遠鏡観測再開

 ハッブル宇宙望遠鏡はハードウェアに問題が生じ1ヶ月ほど観測ができない状態にありましたが2021年7月17日に問題が解決され観測が再開されると発表がありました。

 NASAは6月14日にハッブル宇宙望遠鏡の科学機器を制御するペイロード・コンピュータが停止しメインコンピュータが全ての科学機器を自動的にセーフモードに切り替えたとの発表をしていました。原因はメモリモジュールの劣化だと思われましたがバックアップのメモリモジュールに切り替える作業は成功しませんでした。運用チームは別の可能性を探り、テストを繰り返した結果「SI C & DH (Science Instrument Command and Data Handling、科学機器コマンドおよびデータ処理)」ユニットに組み込まれたパワーコントロールユニットが原因であろうと結論づけたそうです。

 パワーコントロールユニットには、ハードウェアに電力を安定供給する役割がありますが、メモリに一定の電圧を出力するレギュレータやレギュレータの出力電圧が許容範囲を外れた場合にペイロード・コンピュータを停止させる保護回路が含まれています。

 運用チームはレギュレータの出力電圧が許容範囲を外れているか、保護回路の経年劣化でペイロード・コンピュータの停止が起きたと分析し、解決のためコマンドを送信しパワーコントロールユニットのリセットを試みましたがうまく行かなかったそうです。運用チームは「SI C & DH」ユニット全体をバックアップに切り替える作業を行いました。そして作業は成功しセーフモードから復帰しました。これによりハッブル宇宙望遠鏡の運用は再開されたと言うことです。ハッブル宇宙望遠鏡は日本時間7月18日から科学観測を再開しています。

 運用再開したハッブル宇宙望遠鏡からは早速捉えた星の画像を届けてくれています。一つは、およそ2億9700万光年先にある相互作用銀河「ARP-MADORE2115-273」です。相互作用銀河は複数の銀河がお互いに重力の影響を及ぼし合っている銀河のことです。

 もう一つは4億9000万光年先にある渦巻銀河「ARP-MADORE0002-503」です。この銀河は3本の渦巻き腕を持っており、大きさが半径16万3000光年にもなるそうです。

 打ち上げから31年のハッブル宇宙望遠鏡は何度も危機を乗り越えながらも美しい宇宙の姿を届けてくれています。今後もそうした美しい宇宙の姿を捉えてくれることに期待したいですね。

参考URL

sorae
ハッブル宇宙望遠鏡が科学観測再開へ、1か月以上に渡る中断から復帰

ハッブル宇宙望遠鏡が科学観測再開へ、1か月以上に渡る中断から復帰



sorae
科学観測を再開した「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した最新画像が公開される

科学観測を再開した「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した最新画像が公開される


Wrote: 寺地