土星の衛星タイタンからのサンプルリターン

 NASAは2026年に打ち上げ予定のドローン型探査機「ドラゴンフライ」による土星の衛星タイタンの探査を行う計画があります。

 このタイタンの探査にNASA革新的先進コンセプト(NIAC)プログラムと言う将来的にNASAのミッションを革新しうる夢のようなアイデアを育てるためのプログラムにより、NASAのグレン研究センターの研究チームのタイタンからのサンプルリターンのアイデアが採用されたと発表がありました。

 土星の衛星タイタンは、直径が5150kmもあり、水星の直径4880kmより大きい衛星です。タイタンの大気圧は地表面が1.5気圧です。温度は-179℃でメタンの雨が降りメタンの川や海が形成されています。また、大気中のメタンは窒素と光化学反応を起こしソリンと呼ばれる有機物になって空気中を漂ったり地面に降り積もったりしているそうです。タイタンのこうした環境は生命誕生以前の地球に似ている環境だと言います。タイタンを探査することで地球での生命誕生の過程を知る貴重な環境なのです。

 タイタンへの探査機投入は難しくないと思われています。探査機ドラゴンフライはパラシュートによる減速で降下していき最終的には自身のプロペラにより地表に降り立ちます。

 課題はサンプルリターンのためのタイタンからの離脱です。今回研究チームはタイタンの地表からサンプルを採取しこれを地球に持ち帰るために必要なロケットの燃料を現地調達しサンプルリターンをすると発表しました。ロケットの燃料自体は大気中のメタンを使うので問題ないのですが問題は燃焼に必要な液体酸素の調達です。研究チームのアイデアは、タイタンの岩石は水の氷でできているので、原子力の生み出す熱を使ってこれを溶かし、その後、電気分解して、液体酸素を製造すると言うアイデアです。

 このアイデアはまだ正式にミッションに組み込まれたわけだはないので今後NASAがこのサンプルリターンミッションを組み込むのか注目ですね。

参考URL

タイタンからのサンプルリターンに関するアイデアがNASAに採用される


Wrote: 寺地