南米チリにあるアルマ望遠鏡「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」による観測で129億年前というとても古く、天の川銀河の100分の1の質量しかない小さな銀河が見つかりました。これほど古く小さな銀河を見つけるのはかなり難しいのだそうです。
アルマ望遠鏡を使った宇宙初期の銀河を探す大規模掃天観測計画によってこうした小さい銀河の観測につながりました。この観測には重力レンズ効果を利用し遠くの暗い銀河の光を何倍にも増光する事で検出しています。重力レンズ効果は、遠くから放たれた光が進路上にある質量の大きい銀河などの影響で曲げられながら届く現象です。この時重力がレンズを通したような働きが起こるので重力レンズ効果といいます。
今回の計画では、アルマ望遠鏡を95時間という、とても長い観測時間をかけて行いました。重力レンズを引き起こす33個の銀河団の中心領域をくまなく観測し、うさぎ座の方向RXCJ0600-2007と呼ばれる巨大銀河団の作る重力レンズ効果を受けた遠方の銀河を捉えました。ジェミニ望遠鏡による観測データとあわせるとこの銀河が129億年前の銀河の光だと判明しました。この銀河は「RXCJ0600-z6」と名付けられました。この銀河の観測データを詳しく分析すると重力レンズの増光率が最大となる場所を越えていることがわかったそうです。RXCJ0600-z6という銀河は重力レンズによって約160倍にも拡大されていました。
重力レンズ効果を生み出している巨大銀河団の質量分布を詳しく計測することでRXCJ0600-z6の重力レンズの影響を取り除いた本来の姿を見ることができるのです。ハッブル宇宙望遠鏡や欧州南天天文台による観測データなどを組み合わせRXCJ0600-z6の本来の姿を復元しました。すると、この銀河の総質量は太陽の約20億〜30億倍と言うことがわかりました。これは天の川銀河の100分の1程しかないという事です。宇宙誕生から10億年未満の銀河で構造がこれほど観測できるのは初めてのことです。
今後は2021年秋頃打ち上げられる予定のジェイムズ・ウェップ宇宙望遠鏡によるさらなる観測が決まったそうです。今後のさらなる観測に期待したいですね。
ー引用ー
そこで、研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡や南天天文台のVLT(Very Large Telescope)の観測データ、重力レンズ効果を精密に計算できる理論モデルなどを駆使して、ついにRXCJ0600-z6の本来の姿の復元に成功しました。
これによって、RXCJ0600-z6は、その質量は私達の天の川銀河の1/100ほどしかないものの、私達の天の川銀河と同様に回転していることがわかりました。RXCJ0600-z6のような、宇宙が誕生してからわずか9億年後の初期の小さな銀河が回転しているのが明らかになったのはこれが初めてとなります。
ー引用終わりー
Sorae
アルマ望遠鏡サイト
Wrote: 寺地