今からおよそ6600万年前、現在のユカタン半島北端付近に直径十数kmと推定される天体が衝突し、直径約150kmの「チクシュルーブ・クレーター」が生まれました。この衝突で恐竜や多くの動植物が死滅したと言います。このチクシュルーブ・クレーターがどのようにできたのか調査研究が進んでいるようです。
今回研究成果を出したのは、ブリュッセル自由大学のSteven Goderis氏、東京工業大学の石川晃氏らの国際研究グループです。研究グループはチクシュルーブ・クレーターの地中を掘削した土から天体に由来するイリジウムを高濃度で含む地層が見つかったとする研究成果を発表しました。
2016年4月から5月、チクシュルーブ・クレーターの内側に形成された「ピークリング」と呼ばれる構造が存在するユカタン半島沖合において、国際協力プロジェクトの国際深海科学掘削計画（IODP）によって長さ約830mの掘削コア試料が採取されました。
ピークリングは直径が数十km以上の比較的大きなクレーター内部に形成されるリング状の隆起構造で、このクレーターは、中心から約45kmの地点にピークリングが形成されているそうです。
掘削した堆積物のコア試料のうち、衝突に由来する130mを分析し、結果ピークリングを覆う堆積物の最上部から天体に由来する高濃度のイリジウムが検出されたそうです。
直径数kmの天体が衝突する場合は物質のほとんどが気化して外部に放出されるとみられることや、クレーター内部は衝突にともなう衝撃波や地震、津波などの影響を強く受けるので、天体の物質を示す痕跡は見つからないと考えられていました。今回検出されたイリジウムは、衝突によって大気中に舞い上がった物質が数年から数十年かけてクレーター内部に降り積もった可能性を示唆するといいます。
研究グループは高濃度のイリジウムを含む層の下およそ130mに及ぶ衝突由来の堆積物を解析しクレーターがどのようにできたのか調べるそうです。また、衝突によって飛散した物質が地球全体に拡散する過程も調べるそうです。
Wrote: 寺地