すばる望遠鏡が探す原始ブラックホールとは?

宇宙には未だ発見ができていない謎の物質「暗黒物質」と呼ばれるものがあります。暗黒物質(ダークマター)は天文学的現象を説明するために考え出された質量を持つが光学的に直接観測できない仮説上の物質です。これまでの様々な天文観測で間接的に暗黒物質の存在が示唆されていますが正体は未だに不明のままです。

すばる望遠鏡は暗黒物質の候補である原始ブラックホールを探索しているのです。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の研究者らによる国際研究グループは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSC(ハイパー・シュプリーム・カム)で、原始ブラックホールを探しています。

原始ブラックホールは宇宙が加速膨張したきっかけ「ビッグバン」の頃に空間自身が崩壊してできたブラックホールの可能性があるそうです。原始ブラックホールが観測できれば超大質量ブラックホールの起源を説明できる可能性もあるのだとか。

Kavli IPMUでは2014年にもすばる望遠鏡で原始ブラックホールの探索を行っています。スティーブ・ホーキンス博士が予言した月の質量より軽い原始ブラックホールの発見を目指しアンドロメダ銀河にある9000万個の星の明るさの変化を調べましたが原始ブラックホールによって引き起こされたと思われる重力マイクロレンズ効果の候補が1例しか見つからず、天の川銀河とアンドロメダ銀河の間に存在する暗黒物質が原始ブラックホール由来ではないと結論付けられました。

研究成果ではすべての質量の原始ブラックホールが否定されたわけではありません。暗黒物質が原始ブラックホールである可能性はまだ残されているのです。今回のすばる望遠鏡による探索で原始ブラックホール形成の手がかりが得られる事が期待されています。

※重力マイクロレンズ効果: 天体の重力によって光の進む向きが曲げられることで、その背後にある星(光源星)の明るさが増したように観測される現象

ー引用ー

今回進められている探索は、月よりも軽い原始ブラックホールの可能性を再検討した研究成果をもとに進められています。研究グループが注目したのは、宇宙初期のインフレーションで生じたかもしれないという「子」宇宙です。
私たちが住むこの宇宙以外にも複数の宇宙(多元宇宙)が存在しているとする「多元宇宙論」という理論があります。研究グループは、インフレーションの際に誕生した数多くの子宇宙が収縮することでブラックホールが形成されたとする理論を提唱しており、すばる望遠鏡のHSCによる原始ブラックホールの探索によってこの理論が検証できるとしています。

ー引用終わりー

参考URL

https://sorae.info/astronomy/20210102-dark-matter.html


Wrote: 寺地