暗黒物質(ダークマター)の特性を探る研究結果が2019年10月2日にPHYSICAL REVIEW LETTERSで公開されました。その論文によると、初期の宇宙で形成された銀河の分布に近い分布となるにはダークマターは「ファジー」な特性のダークマターである可能性が高いとのシミュレーション結果が得られたようです。
"First Star-Forming Structures in Fuzzy Cosmic Filaments"
Fuzzy dark matter (consisting of ultralight bosons) leads to distinctive signatures in the proto-galaxies. #astro
Letter: https://t.co/TFRnrPQqBO
Synopsis: https://t.co/Uw92cSC7p6— Physical Review Lett (@PhysRevLett) October 2, 2019
「ファジー」ダークマターとはどのようなものか、気になったと思います。まず、ダークマターの特性には、もともと「コールドダークマター」と「ホットダークマター」の2種類が考えられていました。「コールドダークマター」とは運動エネルギーが小さい(速度が遅い)ダークマターのことで、「ホットダークマター」とは質量が小さく、運動エネルギーが大きい(速度が非常に速い)ダークマターのことです。
「ホットダークマター」と考えると、ビッグバン直後の銀河の形成を説明できないため、従来はダークマターは「コールド」と考えることが優勢だったのですが、それでもうまく説明できないことが出てきたため、「ファジー」なダークマターが登場してきたようです。この「ファジーダークマター」とは、粒子が個々に動くのではなく、粒子が集まって波のように動くと考えられるダークマターのことのようです。
過去にダークマターのフィラメントが銀河の間を橋渡ししている様子が可視化されましたが、今回の研究では、そのような分布になるためのダークマターの特性がシミュレーションされました。
ダークマターは重力でしか他の粒子と相互作用をしないため、ダークマターが集まって波のように動くと考えるのは自然なのかもしれませんね。このように特性を明らかにすることでダークマターの正体に一歩近づいているのでしょう。
参考
PHYSICAL REVIEW LETTERS
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.123.141301
https://physics.aps.org/synopsis-for/10.1103/PhysRevLett.123.141301
https://techable.jp/archives/109467
Wrote:わたなべ