マサチューセッツ工科大学の研究チームは、土星の自転軸の傾きと環の存在はかつて土星の周りを周回していた衛星の軌道が不安定になった結果、衛星が崩壊し発生したものとの説を科学誌「Science」に発表しました。
土星の自転軸は、軌道面に対して約27度傾いています。これまでの研究で形成されて間もない頃の土星の自転軸は軌道面に対してあまり傾いていなかったものの、今から40億年以上前に軌道が変化した海王星の影響を受けて、土星の自転軸が傾いたと考えられていました。
研究チームは、土星の内部をモデル化することで、土星の角運動量を求め、海王星との共鳴の影響を解明しようとしたところ、求められた角運動量では、海王星と共鳴するには小さいことがわかりました。そこで、シミュレーションを重ねた結果、過去にもう一つ土星の衛星があったと仮定することで、海王星と共鳴していた可能性が明らかになりました。研究チームはその衛星を「Crysalis」(英語でさなぎの意味)と呼んでいます。この「Crysalis」があったことで、かつての土星は海王星と共鳴し、自転軸の傾きを大きくしたとのことです。さらに、「Crysalis」は土星の別の衛星タイタンと共鳴したことで軌道が変化し、今から約1億〜2億年前に土星に近づき過ぎたことで崩壊し、その破片の一部が土星の環を形成したと考えられるとのこと。
土星の自転軸の傾きと環の形成原因を同時に説明できる仮説が発表されました。今見えている惑星や衛星がその形成時から今と同じ姿をしていたわけではないので、このように現在はない衛星を仮定することで、現在の姿になった原因を説明できるというのは面白いですよね。
https://www.businessinsider.jp/post-259508
https://news.mit.edu/2022/saturn-rings-tilt-missing-moon-0915
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abn1234
Wrote: わたなべ