すばる望遠鏡で新たなアイデアを用いて褐色矮星を直接観測

 すばる望遠鏡による観測で、新たなアイデアを用いた観測で成果が出ているそうです。
 すばる望遠鏡には新たな装置が設置されています。2017年頃に設置された装置で、一つは「SCExAO(スケックスエーオー)」ともう一つは「CHARIS(カリス)」です。

 地上望遠鏡の宿命である大気の乱れは観測に大きな影響を与えます。SCExAOは大気のゆらぎによる像の乱れを検出し、補正してシャープな星像を作る補償光学装置です。CHARISは明るい恒星の周りを回る暗い惑星を見分けて分光観測を行うことで惑星の表面の状態、温度、大気など明らかにする事が可能な観測装置です。これらの装置は2年間の調整を経て幾つか成果をあげてきているそうです。

 今回行われた新たな観測方法は、NASAエイムズ研究センター/国立天文台ハワイ観測所のセイン・キュリー氏らが用いた観測で、ぎょしゃ座の方向およそ86光年先に褐色矮星「HD 33632 Ab」と言う星を発見しました。

 これまで太陽系外惑星は直接観測するのは難しく、多くはトランジット法や視線速度法といった方法で間接的に観測されていました。トランジット法は主星の手前を星が横切るときにわずかに明るさが変わるのを捕捉する方法です。視線速度法は系外惑星の公転に伴い主星が揺れ動く様子を主星の色のわずかな変化をもとに捉え系外惑星を検出する方法です。

 セイン・キュリー氏らは欧州宇宙機関の宇宙望遠鏡ガイアの観測データを利用して褐色矮星を直接観測したそうです。ガイアの観測データは、天体の位置や運動について調べるアストロメトリに特化した望遠鏡です。ガイアの観測データから系外惑星や褐色矮星が公転しているとみられる恒星をピックアップして観測を行ったそうです。そして、発見したのが「HD 33632 Ab」だったそうです。

 セイン・キュリー氏は「新装置で得られたシャープな画像のおかげでHD 33632 Abが発見されただけでなく正確な位置や天体の大気の性質を解明するためのスペクトルまで得られました」とコメントしています。

 すばる望遠鏡の観測装置が系外惑星の直接観測に成功したことで今後新たな系外惑星の発見が増えるかもしれません。楽しみです。

参考URL

https://sorae.info/astronomy/20201211-hd33632ab.html


Wrote: 寺地